2009年11月11日

自らの存在の無意味さという苦しみ

海音寺潮五郎の「天と地と」の中で、著者自身がこんなことを言っています。

「人間は自分の生きている世の中はゆがんでおり、不均等であり、濁っており、不正当であると、常に思っている。かつては均整のとれた、正しい姿を持った世があったと思っている。

しかし、実存するものはすべて個性的であるが故に、常にゆがみ、常に濁り、常に動揺しているものだ。完全な世の中などというものはこれまでもあったことがなく、これからもあり得るものではないのである。だから、完全とは人間の観念の中にしかないものであると知ることは悟りの一段階である。

この実在を直下にとらえても失望することなく、少しでも状態をよくして行くことにつとめる者がいたら、悟りの二段階に達したのである。

不完全をいとわず、完全を望まず、しかも一切の行動云為がしぜんに完全に向かっての歩みとなっている人がいたら、大悟の域に達しているといえるであろう。」


引用するには少々長いとも思いましたが文意を損ねないために省略せずに掲載しました。

まさに人生というものが的確に表現されています。

私はこの文章を読むとこのようなことを感じます。

自らの存在の無意味さという苦しみから逃れることはできない。

だからこそ、その無意味性と向き合い続け、
心の奥底に秘めた願望を叶えるためのプロセスを大切にすることができれば、
その行為自体が苦しみを緩和し自らを律する力となり得るのではないかと思います。


「天と地と」は上杉謙信の生涯を描いたもので上・中・下の3巻からなる大作です。

しかし読み始めてみるとスイスイ読み進めることができて、
下巻の最後のほうではページ数が残り少なくなっていくのが
寂しく感じるほどでした。


悟りの二段階に達することができるように日々の生を積み重ねていきたいと思います。

それでは、また。


参考文献
天と地と 上 (文春文庫)/海音寺潮五郎



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天と地と 中 (文春文庫)/海音寺潮五郎



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天と地と 下 (文春文庫)/海音寺潮五郎



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Posted by 鬼塚祐一 at 10:10│Comments(0)
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